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「亡くなる」の言い換え

「亡くなる」は「死ぬ」をやわらげた婉曲表現で、それ自体が失礼にあたるわけではありません。ただしビジネス文書では、誰の死を指すかによって使える語が変わります。取引先の方やそのご家族には敬意を上げた「ご逝去」「お亡くなりになる」を、自社の社員や自分の家族には敬意を含まない「死去」「永眠」を使うのが原則で、ここを取り違えると身内を持ち上げたり、相手方を軽く扱ったりする形になります。

場面で選ぶ言い換え 6選

言い換え相手・場面ニュアンスと使いどころ
ご逝去
改まった場面
取引先・社外相手方の方の死に敬意を向ける語。弔電やお悔やみ状の標準形で、「ご逝去の報に接し」のように名詞で受けると敬語の重ね方を気にせずに済みます
避ける場面:自社の社員や自分の家族について書くとき。相手方に敬意を向ける語なので、身内に使うと自分側を持ち上げる形になります
お亡くなりになる
改まった場面
取引先・社内「亡くなる」に尊敬の「お〜になる」を付けた形。「ご逝去」より口語に近く、電話や対面、社内での共有に馴染みます
避ける場面:「お亡くなりになられる」と「られる」を重ねるとき。二重敬語になります
亡くなられる
標準
社内・取引先「亡くなる」に尊敬の「れる」を付けた形。社内メールや口頭での共有では最も摩擦が少なく、硬すぎも軽すぎもしません
避ける場面:弔電や社外向けの正式なお悔やみ状。文書としてはやや軽く、「ご逝去」に置き換わります
訃報に接する
改まった場面
取引先・社外死の知らせを受けたという事実のほうを主語に立てる書き出し。故人の死に直接触れずに文を起こせるため、お悔やみメールの一文目に使えます
避ける場面:自分が遺族の側として知らせを出すとき。受け取った側の語です
ご不幸
標準
取引先・社内死そのものを名指しせずに事態全体を指す語。日程の変更や引き継ぎなど、事務連絡のなかで理由に触れる場面に向きます
避ける場面:弔意そのものを述べる中心の一文。ぼかした言い方なので、お悔やみの核には弱くなります
ご生前
改まった場面
取引先・社外故人が生きていた期間を指す語。「ご生前は大変お世話になりました」と書けば、死に触れずに関係と感謝を述べられます
避ける場面:まだご存命の方について。「生前」は亡くなった方にしか使いません

そのまま使えるメール例文

取引先の担当者の訃報を受けて、後任の方にお悔やみを伝える

株式会社サンプル商事
営業部 鈴木様

このたびは、田中様のご逝去の報に接し、驚いております。
心よりお悔やみ申し上げます。

ご生前は弊社の案件を長くご担当いただき、
細やかなお心配りに助けられてまいりました。
ご家族の皆様のご心痛はいかばかりかとお察しいたします。

ご葬儀のご案内をいただきましたので、弊社からは部長の山田が参列いたします。

進行中の案件につきましては、落ち着かれてからのご対応で支障ございません。
こちらから急ぎのご連絡は差し控えます。

略儀ながらメールにてお悔やみ申し上げます。

取引先の担当者のご家族の訃報を受け、進行中の案件の期限を緩める

株式会社サンプル商事
田中様

ご尊父様がお亡くなりになったとの由、
謹んでお悔やみ申し上げます。

ご葬儀やお手続きでお忙しいことと存じます。
今週金曜が期限となっておりました見積のご確認は、
翌週以降に動かしても全体の進行に支障はございません。
こちらで日程を引き直しておきますので、ご返信は不要です。

ご不明な点は、弊社の佐藤(sato@example.com)が承ります。
どうぞご無理のないようになさってください。

社内へ取引先の訃報を共有し、弔電と供花の対応を指示する

営業部各位

お疲れさまです。総務部の山田です。

株式会社サンプル商事・田中部長のご逝去について、
同社よりご連絡をいただきましたので共有いたします。

ご逝去は〇月〇日、通夜と告別式はご家族のみで執り行われ、
ご厚志(ご香典・ご供花)は辞退されるとのことです。
部としての供花は手配せず、弔電のみを本日中に総務部から送付いたします。

個別にお悔やみをお送りいただくのは差し支えありませんが、
ご遺族のご負担にならないよう、返信を求めない文面でお願いします。
進行中の案件のご連絡は、後任のご指名があるまで総務部で預かります。

ご不明な点は総務部までお問い合わせください。

家族葬のため香典と供花を辞退するとの連絡を受けて返信する

株式会社サンプル商事
鈴木様

ご連絡をいただき、ありがとうございます。
田中様のご逝去に、心よりお悔やみ申し上げます。

ご葬儀はご家族のみで執り行われ、ご厚志は辞退されるとのこと、承知いたしました。
弊社からの供花とご香典は差し控えます。

ご意向に沿わない形になってはいけませんので、
弔電もお送りしないほうがよろしければ、その旨お知らせください。

ご遺族の皆様が少しでもお休みになれますようお祈りしております。

使わないほうがよい言い換え

置き換えれば丁寧になるとは限りません。次の表現は実際に誤用として指摘されることが多いものです。

ご冥福をお祈りします(相手の宗派が分からないとき)

「冥福」は死後に冥途で幸福を得ることを指す仏教の語です。神道やキリスト教の葬儀では用いず、仏教のなかでも浄土真宗は「亡くなればただちに仏になる」という教えのため冥福を祈る対象がないとして避ける、という指摘があります。宗派が分からない段階では「心よりお悔やみ申し上げます」を使ってください。どの宗教に対しても角が立たない、最も安全な表現です。

重ね重ね/たびたび/返す返す/くれぐれも/ますます

同じ音を重ねる語は「不幸が重なる」ことを連想させるとして、弔事の文面では避ける慣行が定着しています。普段のビジネスメールでは丁寧さを足すための言い回しなので、意識していないと紛れ込みます。「重ね重ねお礼申し上げます」は「深く御礼申し上げます」に、「くれぐれもご自愛ください」は「どうぞご無理なさいませんように」に置き換えてください。

死ぬ/死亡/生きているころ

直接的な語は弔事の文面では避けます。「死亡」は死亡届や保険金請求など手続きの文書で使う語で、人の訃報に用いると事務的に響きます。「生きているころ」は「ご生前」「お元気だったころ」に置き換えます。

浮かばれない/迷う

いずれも故人が成仏できないことを連想させるとして、弔事では避けられる語です。「これでは浮かばれませんね」のように、遺族をいたわるつもりで書いてしまう例があります。根拠は言葉の連想であって論理ではありませんが、ご遺族が気にする可能性がある以上、こちらから踏まないほうが安全です。ご香典の額に四万円や九万円を避ける慣行も、同じ理由によるものです。

お亡くなりになられる/ご逝去なされた

「お〜になる」や「ご〜」に、さらに尊敬の「られる」「なさる」を重ねた二重敬語です。「お亡くなりになりました」で敬意は十分に足りています。

追伸/なお書き

弔事の手紙では、本文のあとに書き足すこと自体が「不幸が後を引く」ことを連想させるとして避けられます。伝え漏れがあれば本文に組み込むか、日を改めて別の連絡として送ります。

頑張ってください(ご遺族に向けて)

ご遺族は葬儀の手配と弔問の対応ですでに消耗しています。励ましは相手にさらに力を出すよう求める形になるため、弔意の文面には向きません。「ご無理なさいませんよう」「落ち着かれましたらで結構です」のように、相手の負担を減らす側の言葉に替えてください。

「亡くなる」を使った文章を、相手に合わせて直す

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よくある質問

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「亡くなる」と「ご逝去」はどう使い分けますか?

敬意の方向で決まります。取引先の方やそのご家族など相手方の死には「ご逝去」「お亡くなりになる」を使い、

自社の社員や自分の家族には「死去」「永眠」を使います。

「弊社の〇〇がご逝去されました」は、身内を持ち上げる形になるため誤りです。

社内の共有など、そこまで格を上げる必要のない場面では「亡くなられました」で十分です。

「ご逝去された」は二重敬語ですか?

見方が分かれます。「逝去」はもともと他人の死に敬意を向ける語なので、

「ご」と「される」を足すと敬語が重なるという指摘があります。

一方で「ご逝去されました」は弔電や新聞の訃報で長く使われてきた形で、

慣用として定着しており誤りとまでは言えない、という立場もあります。

判断を避けたい場合は「ご逝去の報に接し」「ご逝去を悼み」のように名詞で受けるか、

「お亡くなりになりました」に替えるのが安全です。この形ならどちらの立場の読み手にも引っかかりません。

「ご冥福をお祈りします」は使わないほうがよいですか?

相手が仏教で、かつ浄土真宗でないと分かっているなら問題ありません。分からない場合は避けてください。

「冥福」は仏教の語で、神道の葬儀では「御霊のご平安をお祈りいたします」、

キリスト教では「安らかなお眠りをお祈りいたします」といった表現に替わります。

宗派が不明なときの標準は「心よりお悔やみ申し上げます」「謹んで哀悼の意を表します」です。

なお、キリスト教では死を神のもとに召されることと捉えるため、

本来は「お悔やみ」「哀悼」という発想になじまないという説明もあります。

ただし日本のビジネス上のやり取りでは、キリスト教式の葬儀に対して「お悔やみ申し上げます」と書くことは広く行われており、

これを失礼とする慣行はありません。

訃報のメールに「お世話になっております」と書き出してよいですか?

弔事の文面では、時候の挨拶や「いつもお世話になっております」といった前置きを省き、

すぐにお悔やみを述べるのが作法とされています。頭語と結語も省くのが一般的です。

すでにやり取りのある相手であれば、宛名だけを書いて本文に入って構いません。

前置きを飛ばすことが失礼にあたるのではないかと不安になりますが、

弔事では形式を整えることより、短く早く伝えるほうが配慮とされます。

取引先のご家族が亡くなった場合、続柄はどう書きますか?

弔電や弔文では、相手方のご家族を敬称で呼ぶ慣行があります。

父は「ご尊父様」、母は「ご母堂様」、配偶者は「ご主人様」「ご令室様」、

子は「ご子息様」「ご息女様」などです。

「ご尊父」自体に敬意が含まれるため「様」は不要という説もありますが、

「ご尊父様」の形が弔電の定型として広く使われています。

続柄がはっきりしない場合は、「お父様」「ご家族様」のように平易な語にしても失礼にはなりません。

訃報を後から知った場合、どう書き出しますか?

知らなかったことを詫びる形から入ります。

「〇〇様のご逝去を存じ上げず、お悔やみが遅れましたことをお詫び申し上げます」のように、

遅れた事実に触れてから弔意を述べます。時間が経っていても、連絡しないより伝えたほうがよいというのが一般的な考え方です。

ただし、ご香典や供花を後から送るとご遺族に返礼の手間が生じます。

ご厚志を辞退されていた場合は、言葉だけにとどめてください。

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